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テミスの不確かな法廷

テミスの不確かな法廷とは、直島翔による法廷ミステリ小説で、発達障害の診断を受けた裁判官が自らの特性と向き合いながら事件の真相に迫る物語である。司法の手続きの緊張感と、働きづらさや生きづらさを抱える人の視点を重ねた点が特徴とされ、2026年にNHKで連続ドラマ化も行われた。

概要

主人公は任官七年目の裁判官、安堂清春で、幼い頃に発達障害と診断された過去を持つ。周囲との関わりを避けるように生きてきた一方、裁判官としては事実関係のほころびに敏感で、法廷での小さな違和感を手がかりに事件像を組み立てていく。司法の現場で働く当事者の視点と、事件の謎解きを同じ線上で描く点が、この作品の軸になっている。

物語は単に正義を振りかざすタイプの勧善懲悪ではなく、被告人や被害者、弁護士や検察、裁判所職員といった立場の違いがもたらす見え方の差に焦点を当てる。裁判の場では証言や供述が決定的に見えても、それが人の心理や環境に左右されることがあるという不安定さが、タイトルの感触にもつながっている。

原作小説は角川文庫として刊行され、ドラマではNHKの枠で映像化された。主演や制作陣を変えることで、法廷の手続きの緊張と、主人公の内面の負荷が視覚的に強調され、原作のテーマが別の角度から再提示されたといえる。法廷の判断は冷静さを求められる一方で、そこに立つ人間の揺らぎもまた消えないという感覚が、作品全体を貫いている。

ストーリー

前橋地裁の支部に赴任してきた安堂は、特性を周囲に悟られないよう振る舞いながら、日々の公判と事務に追われている。ある日、市長が襲われた傷害事件を担当することになり、被告人が供述を変えるなど不自然な点が続いたことで、安堂は単なる犯行動機やその場の事情では説明できないものを感じ取る。事件の外側にある人間関係や利害、そして当事者が言えない事情が、法廷での言葉の選び方として表面化していく。

物語は一つの事件に収束するだけでなく、複数の案件を通じて安堂の視点が鍛えられていく構成をとる。微笑みながら重大な罪を告白する人物、身内の不幸をめぐって事実認定が揺れる争いなど、法廷で語られる内容と当事者の心の動きが食い違う場面が繰り返し現れる。安堂は感覚過敏や衝動性、対人のぎこちなさといった自分の問題を抱えたまま、それでも淡々と記録を読み、証言の矛盾をほどき、結論へ近づこうとする。

支える存在として弁護士や裁判所内の職員が登場し、安堂の気づきを別の言葉に置き換えてくれる場面も多い。安堂にとって裁判は職務であると同時に、人の気持ちを理解しきれない自分が、それでも他者の人生に触れざるを得ない場でもある。事件の真相に迫る過程そのものが、主人公が社会とつながり直す過程として描かれている。

豆知識

テミスはギリシャ神話で秩序や正義を象徴する存在として知られ、法廷や司法のイメージと結びつけられてきた。作品名にある不確かという語は、法律の条文が曖昧だという意味というより、証言や記憶、立場の違いによって真実の見え方が揺れることへの目配せとして読むことができる。

法廷って冷たい場所に見えるけど、そこに集まるのは感情も事情も抱えた人間ばかりなのだ!

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