1月4日に話題となったキーワードは「神村学園」です。
全国高校サッカー選手権準々決勝で、インターハイ王者の神村学園が日大藤沢に4―1で勝利し、ベスト4進出を決めました。エース倉中悠駕の4得点に揺さぶられながらも、中村龍剛や藤本歩優ら2世選手が「やりきった」と語った一戦から、両校の現在地と高校サッカーのレベルの高さを解説します。
何が起きたか
第104回全国高校サッカー選手権準々決勝で、神村学園が日大藤沢を4―1で破り、国立競技場での準決勝進出を決めました。
注目を集めたのは何故か
倉中悠駕の1試合4得点というインパクトと、元日本代表の中村憲剛氏、藤本淳吾氏の息子たちが出場したことが大きな話題となりました。
ポイント
神村学園の完成度の高い攻守と、敗れた日大藤沢の健闘や「やりきった」と語る選手たちの姿が、高校サッカーの今のレベルと価値を象徴する試合になりました。
攻守のレベルもメンタルも、高校生とは思えない濃い試合だったのだ。
日大藤沢対神村学園の試合経過
この試合は、インターハイ王者として夏を制した神村学園に、関東の強豪・日大藤沢が挑む構図でした。前半から神村学園がボールを握る時間が長く、サイドと中央を使い分けた攻撃で主導権を握ります。
前半29分、神村学園のエース倉中悠駕が先制点を決めると、その後も勢いは衰えません。後半立ち上がりにも追加点を奪い、一気に流れを引き寄せました。日大藤沢は0―2と苦しい展開のなかでもラインを押し上げ、後半17分にDF小林昴瑠が一矢を報います。
しかし、その後も倉中が次々とゴールを重ね、最終的には4得点。試合は4―1で神村学園の完勝に終わりました。スコアだけを見れば一方的ですが、GK橋本友翔のビッグセーブがなければ前半で勝負が決まっていてもおかしくない、という声も多く出ているほど内容の濃いゲームでした。
神村学園が見せた攻撃と守備
この試合で改めて示されたのが、神村学園の総合力です。倉中の4得点が注目を集めていますが、その裏には中盤の福島和毅を中心としたゲームメイク、前線の日高や徳村のスピードを生かした仕掛け、そして全員でボールを奪いに行く守備の強度があります。
ボールを失ってからの切り替えの速さは、多くの観戦者が「プロクラブさながら」と評するほどでした。相手の攻撃をことごとくつぶし、セカンドボールを回収してから一気にゴール前へ運ぶ流れがスムーズで、相手ボールから数秒でシュートまで持ち込むシーンが何度も見られたことが、4得点という結果につながったと言えます。
守備面でも、最終ラインが高い位置をキープしながらも背後のスペースをカバーし、日大藤沢のカウンターを最小限に抑えました。激しい当たりと運動量に支えられたサッカーは、夏のインターハイ優勝時からさらにブラッシュアップされている印象です。
日大藤沢が残したものと課題
一方で、敗れた日大藤沢も決して「力がないチーム」ではありません。地元・神奈川の会場で、多くの声援を背に戦った選手たちは、最後まで自分たちのスタイルを貫こうとしていました。監督が「真っ向勝負」と語ったように、前からボールを奪いに行く姿勢は試合を通して貫かれています。
元日本代表・中村憲剛氏の長男、中村龍剛は先発出場し、「もっと自分たちのサッカーを出したかったが、全員が120%で戦った」と振り返りました。「嫌でも注目される」状況の中で、親の名前に頼らず、仲間と日本一を目指してきた過程も含めて、この敗戦は大きな経験になったと言えます。
後半途中から出場した藤本歩優も、「自分が出せる全力は出せたので悔いはない」と話し、大学進学後もプロを目指す決意を口にしました。日大藤沢はベスト8という結果以上に、強豪・神村学園と真っ向からぶつかった経験を得たことで、選手たち一人ひとりの今後のキャリアに重要な“物差し”を手に入れたと言えるでしょう。
日大藤沢キャプテン、橋本友翔はスーパーセーブを連発してて気迫も凄かったのだ…
2世選手たちが示した「名前ではなく自分」で戦う姿
この試合で特に注目を集めたのが、かつてJリーグで活躍した名選手たちの息子たちです。中村龍剛は、父・中村憲剛のイメージもあってどうしても比較されがちですが、「大好きな3年生たちと日本一を目指そうとやってきた」と語っています。そこには、親の肩書きではなくチームの一員として戦う姿勢が表れていました。
藤本淳吾氏の長男・藤本歩優も、「お父さんの背中を追ってプロに行きたい気持ちはあるが、自分は藤本歩優としてやっていきたい」と話しています。こうした言葉からは、周囲の期待やプレッシャーを受け止めつつ、自分のスタイルで勝負したいという強い意志が伝わります。
高校サッカーはしばしば「ドラマ」として語られますが、この2人のコメントは、結果だけでなくプロセスを大事にしてきた時間の積み重ねを感じさせるものでした。試合後の「やりきった」という言葉には、勝敗を超えた手応えと悔しさの両方が込められているように見えます。
夏冬2冠へ進む神村学園と、選手のコンディション問題
神村学園はこの勝利でベスト4に進み、準決勝では福島の尚志と対戦します。夏のインターハイ決勝でも顔を合わせた相手であり、再戦を楽しみにする声が多く上がっています。夏のインターハイに続き冬の選手権でも優勝すれば、神村学園は史上6校目となる夏冬連覇達成が現実味を帯びてきます。
一方で、エース倉中が疲労骨折を抱えながらプレーしているという報道もあり、その点には懸念の声も出ています。痛み止めを使いながらのプレーは、短期決戦だからこその判断とも言えますが、将来を考えるとリスクも無視できません。
それでも、倉中の高い決定力と、チーム全体の運動量・連動性は今大会屈指です。多くのファンや解説者が「優勝候補筆頭」と評するのも納得できる内容で、準決勝・決勝でもどこまで圧倒的なサッカーを見せるのか注目が集まっています。
高校サッカーの現在地と、この試合が教えてくれるもの
この一戦は、単なる強豪対決以上の意味を持っていました。プレミアリーグやプリンスリーグに所属するチーム同士の対戦が増えたことで、高校サッカー全体のレベルは確実に上がっています。ある観戦者が「レアル対ブライトンのような構図」と表現したように、個のクオリティと組織力が高い次元でぶつかり合う試合が増えてきました。
同時に、地元出身選手と県外からのメンバーが混ざり合い、それぞれの地域の思いやサポーターの声がスタンドから飛ぶ光景も、今の高校サッカーらしい風景です。鹿児島代表としての誇りを背負う神村学園と、神奈川県民の期待を受けた日大藤沢。どちらのチームにも、多くの「応援したい理由」がありました。
高校サッカー選手権は、プロへの通過点であると同時に、その瞬間にしかない「最後の大会」でもあります。ベスト8で敗れた日大藤沢の選手たちにとっても、4強へ進んだ神村学園の選手たちにとっても、この日の90分は人生の節目として刻まれていくはずです。
倉中悠駕は卒業後は国士舘大に進学するのだ!

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